12月, 2019年
【コラム】働き方改革~男性の育児休暇
国家公務員の男性に育児休暇・休業の取得を促すため、政府が検討している新たな取り組みがわかった。子供が生まれた男性職員の上司に育休取得に責任を持たせる。1カ月以上の取得を推奨し、職員の意向に基づいた取得計画を作成する。実効性を高めるため管理職の取り組みは上司の人事評価に反映する。
三菱UFJ銀行では、10営業日の短期の育児休業と、通常の有給休暇などを合わせて約1カ月の長期育休を男性行員に促す。部下が育休を取れているかどうかを上司の人事評価の対象とし、制度利用を促す。また、積水ハウスは18年9月から男性社員に1カ月以上の育休取得を義務付けた。日本生命保険は13年から6年連続で男性社員の「育休取得率100%」を達成している。
厚労省雇用均等基本調査(平成27年)によると、男性の育休取得日数は「5日未満」が56.9%と突出し、次いで「5日~1カ月未満」は26.2%で、「1カ月以上」は16.7%だという。平成30年時点での男性の育休取得率は6.16%にとどまっているようだ。ノルウエーでは、2012年以降には男女ともに90%を超えており、スウェーデンも男女とも80%前後までになっている。ドイツの場合、2016年には男性が、34.2%まで伸びた。「両親手当」により、育児休暇中でも給料の67%の給付金を受け取ることができるようになったと聞く。
日本でもよく知られていないが、「パパ・ママ育休プラス」という制度があり、条件を満たした場合、育休期間を最大2ヶ月引き延ばすことができ、パパも給付を受けることができる。ただ、利用者の割合は低く、女性の復職者のうち、パパ・ママ育休プラスの利用者割合は 1.9%、男性は 3.0%であった。
昨日のコラムで書いた日本の出生数は、統計開始以来の最低数となった。男性の育休取得は、国の運命をも決める少子化問題の解決策の大きな一つになり得るのではないだろうか。多くの企業で、こうした先進的な取り組みを進めていくことが、女性が活躍できる職場環境の整備と働き方改革につながることになるのではないか。
【コラム】働き方改革~国内出生数
厚生労働省が24日発表した2019年の人口動態統計の年間推計で、日本人の国内出生数は86万4千人となった。前年比5.92%減と急減し、1899年の統計開始以来初めて90万人を下回った。出生数が死亡数を下回る人口の「自然減」も51万2千人と初めて50万人を超え、少子化・人口減が加速している。
総務省によると2019年7月時点で25~39歳の出産期の女性は969万人で、前年同月より約21万人減った。1971~74年生まれの団塊ジュニアが45歳以上になるなど、複数の要因が重なって出生数の急減を招いた可能性があるとしている。
明治5年の日本の総人口は、3,480万人であったそうだ。明治 45年に、5,000 万人を超え、昭和45年に初めて1億人を超えている。最も出生数が多かったのは、団塊の世代と言われる昭和22年~昭和24年で、260万人もあった。当時の人口が8,300万人程度なので、現在の1億2,600万人と比べると、5分の1程度に下がっていることになる。
出生数の減少の要因としては出産適齢期の女性人口の減少に加え、20歳代での結婚や出産が減っている点が挙げられる。「仕事の責任が重く、出産しても時短を選ぶことが難しい」との声があり、仕事は性別に関係なく同じ成果が求められるから、「出産後もいまのポジションが確保されるという確証がないと子どもを産めない」との声もある。
総務省の労働力調査によると、25~34歳の女性の就業率は80%を超えた。しかし、女性の就業率が上昇すると少子化になるというわけではない。スウェーデンなどでは女性の就業率が高く、出生率も17年で1.78と高いと聞く。少子化社会対策基本法が成立し、政府は仕事と子育ての両立や待機児童対策、保育料無償化や働き方改革、男性の育児参加などを推進してきている。2019年10月からは幼児教育や保育の無償化も始めた。子育て世帯への支援は強化されてきた。
働き方改革で、労働力の担い手として、「高齢者」「女性」「外国人」が挙げられるが、国の運命をも決める少子化問題は、女性が活躍できる職場環境の整備と働き方改革が最重要課題の一つではないだろうか。企業の一層の工夫と対策が必要で、男性を中心に社会の意識を変えることが重要だ。
2020年の景気見通しに対する企業の意識調査
2019年12月9日に発表された7-9月期の実質GDP成長率2次速報は、前期(4~6月期)比0.4%増(年率換算で1.8%増)となり、4四半期連続でプラスの成長となった。省力化投資などの設備投資や公共工事、五輪関連の建設需要などに加え、消費税率引き上げ前の駆け込み需要も好影響を与えた。一方、相次ぐ自然災害や世界経済の動向、人手不足の深刻化などの懸念材料もあり、業種や地域で景況感に格差が生じている。そこで、帝国データバンクは、2019年の景気動向および2020年の景気見通しに対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2019年11月調査とともに行った。
■調査期間は2019年11月18日~30日、調査対象は全国2万3,678社で、有効回答企業数は1万46社(回答率42.4%)。なお、景気見通しに対する調査は2006年11月から毎年実施し、今回で14回目
■本調査における詳細データは景気動向調査専用HP(http://www.tdb-di.com)に掲載している
調査結果
1 2019年の景気動向、「回復」局面であったと考える企業は3.7%となり、2年連続で1ケタ台となった。他方、「踊り場」局面とした企業は47.1%と半数近くにのぼったほか、「悪化」局面とした企業は31.2%と前回調査(2018年11月調査)から14.0ポイント増加し、7年ぶりの3割台に上昇
2 2020年の景気見通し、「回復」局面を見込む企業は6.8%で、2年連続で1ケタ台となった。「踊り場」局面になると見込む企業は32.8%と、前回調査(38.2%)より減少したものの、「悪化」局面を見込む企業は37.2%で2年連続で増加しており、過去3番目に高い水準となった。景気の先行きについて、1年前より厳しい見方を強めている様子がうかがえた
3 2020年景気への懸念材料は、「人手不足」が46.2%で最も高かった(3つまでの複数回答)。以下、「中国経済」(34.8%)が3割超で続き、「原油・素材価格(上昇)」(24.9%)、「米国経済」(22.8%)、「消費税制」(22.1%)が続く
4 景気回復のために必要な政策、「人手不足の解消」が39.6%(複数回答)と4割近くにのぼり、トップとなった。次いで、「個人消費の拡大策」(33.8%)、「所得の増加」(31.3%)、「公共事業費の増額」(26.7%)、「個人向け減税」(26.5%)が続いた。他方、災害に対する政策を重視している企業もみられた
【コラム】働き方改革〜兼業・副業
厚生労働省は23日、多様な働き方を実現するための新たな制度見直し案をまとめた。兼業や副業をする人が勤務中の事故などで働けなくなった場合に、本業の賃金と合算して労災保険を給付する。雇用保険の一部も見直すらしい。
現在の労災の休業補償給付の算定基準は、労災事故を起こした会社の月収を前提に金額を決めている。収入が僅かな兼業先で労災事故に遭った場合、僅かな収入の算定基準となるため、本業での収入は補償されないことになる。見直し後は、兼業先と本業先の収入の合算が算定基準になるようだ。労災が認定されやすくなるよう労働時間も合算される。また、雇用保険も高齢者に限り、複数の職場で週20時間以上となれば加入できるようにする。給付目当てで副業するなどのモラルハザードが起きないか検証し対象を広げる
兼業・副業について、従来、企業は懲戒処分の対象として、基本的には認めることは少なかった。リクルートキャリアの調査によると、禁止が71.1%、推進・容認が28.8%となっている。兼業・副業の禁止理由は、「社員の長時間労働・過重労働を助長するため」が44.8%と最も高く、兼業・副業の受け入れについては、40.6%の企業が受け入れ済もしくは検討中としている。
労働者のメリットとして、・ 離職せずとも労働者が主体的にキャリアを形成することができる。・本業の所得を活かして、自己実現を追求することができる。・所得が増加する。・本業を続けつつ、将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。一方、企業としてのメリットは、・労働者が社内では得られない知識、スキルを獲得できる・ 優秀な人材の獲得、流出の防止・ 労働者が社外から新たな知識、情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。
働き方が多様化する中で副業希望者は増えているが、本業と副業の掛け持ちで懸念される長時間労働をどう管理していくか。企業が副業者の健康確保に取り組むことを前提に、他の仕事の時間とあわせず「事業主ごとに上限規制を適用する」といった案がでているが、労働者側は長時間労働を助長する可能性が出てくる。
新卒一括採用や終身雇用といった従来型の雇用制度が変わり、副業や兼業を含めて働き方が多様化する中、働き手や企業が使いやすい仕組みを整えることが、働き方改革につながっていくのではないか。
【コラム】働き方改革~特定技能制度
国土交通省は特定技能制度で来日した建設分野の外国人の失踪や不法就労を防ぐため、工事の元請けとなる大手建設会社に就労環境の点検を義務付ける。契約などと異なる劣悪な環境で働いていないか確かめることを求める。失踪する外国人が多く、大手企業を巻き込んで持続可能な受け入れ態勢づくりをめざすようだ。
先日もベトナム人技能実習生らに違法な時間外労働をさせ、割増賃金を支払わなかったうえ賃金台帳に虚偽の記載をした事件があった。また、法務省が2018年に発表によれば、2017年に失踪した実習生は7千人を超し、2013年からの5年間では延べ2万6千人が失踪しているらしい。
特定技能制度や技能実習生とは、どのようなものなのか。「技能実習」での外国人の受け入れは、日本の国際貢献や国際協力の一環として、今日まで続く外国人“研修”制度だ。最長5年の実習が終われば、母国に帰国して修得した技術・技能を活かせる業務に従事することが条件となる。「特定技能」はまさに「労働力」だ。外国人を労働力が不足する産業の人材として従事してもらうためのものだ。
「技能実習制度」は、日本政府はあくまで「外国人単純労働者」の導入は行わないとしていたが、「外国人実習生」として、実質的には外国人労働者の導入を行ったのである。「労働者」であるにも関わらず、「労働者ではない」という存在を作り上げてしまった。
法務省は、受け入れ機関の不正行為を指摘された機関は、2017年213団体。2015年の273、2016年の239と、これだけ多くの機関が不正行為を行っている。大量の失踪を発生させている原因には、こうした悪質な受け入れ団体や受け入れ企業の存在がある。
「特定技能制度」は、労働者として受け入れる訳なので、こうした問題が起こることはないのだろうか。厳しい監視が必要だ。
【コラム】働き方改革~高年齢雇用継続給付金
厚生労働省は20日、賃金が現役時代に比べて大幅に下がった60~64歳の高齢者に支払う「高年齢雇用継続給付」を段階的に減らす案をまとめたようだ。65歳までの継続雇用が完全義務化される2025年度から、新たに60歳になる人の給付率を半分に減らす。今後は見直しに伴う企業への支援策と合わせ、給付制度の廃止も検討する。18年度の支給額は17年度比1.3%増の1769億円だった。
この給付金が最終的になくなることで、退職後の公的給付金は、65歳からの年金給付だけになる。60歳定年で退職したあとは、働かない限り65歳まで収入は立たれることになる。収入なしに生活していくことができる資産家でない限り、生活していくことは、困難になる。つまり働かなければならない状況になるということだ。
在職老齢年金とこの高年齢雇用継続給付金は、以前から高齢者の働く意欲を阻害する制度として問題視されていた。フルタイムできっちりと働き収入が増えれば、公的給付が減らせれるため、そこそこの働き方であれば、公的給付の満額がもらえるため、意欲を持って働こうとする人のモチベーションを阻害すると言われてきた。
もともとこの給付金は、60歳以降の雇用継続は基本的に企業の財政難などもあり賃金の引き下げが行われることへの補助として機能してきた。あくまで65歳定年を前提にしていたもので、それ以降の継続雇用の賃金は、引き下げられることが当たり前の上での、制度としての仕組みであった。
政府の社会保障制度改革の中で、「年齢を基準に『高齢者』とひとくくりにすることは現実に合わなくなっている」と指摘し、仕組みを変えるとのことだが、定年後の継続雇用や定年延長に伴う賃金が、はたして年齢を基準に決めない仕組みに変わることができるのだろうか。
高齢者の働き方が変革しても、企業はその働き方の変革に対応してくれるかどうかが、高齢者の働き方改革の成否を握る。
【コラム】働き方改革~70歳までの就労機会確保
・政府は19日、社会保障制度改革の中間報告をまとめた。その中で、長く働ける環境づくりも急ぐため、希望する高齢者に70歳まで就業機会を確保するよう企業に努力義務を課す。
・現在、高年齢者雇用安定法では、企業はすべての希望者を65歳まで雇用することが義務付けられている。それよりさらに5年長い70歳までの就業機会をいかに与えるかについては、従来の3つの選択肢(1)定年廃止(2)定年延長(3)嘱託などで再雇用があるが、(4)他企業への再就職支援(5)起業やフリーランスになり、業務委託契約を結ぶ(6)勤め先が出資するNPOなどに参加の3択を加えるという。
・中間報告の中で「年齢を基準に『高齢者』とひとくくりにすることは現実に合わなくなっている」と指摘した。65歳を基準に高齢者として一律に支えられる側に回る今の仕組みを変えていく必要があるとしている。
・そもそも「定年」とは、どのような意味をもつのだろうか。広辞苑によると「規則によって退職する決まりになっている年齢」としている。なぜこのような制度がはじまったのだろうか。「致仕(ちし)」と言って、中国の「礼記」にならった考え方があったとされ、礼記では「70歳を超えたら地位を他の人に譲る」ということが礼だとされていて、言い返せば、当時の定年とは自分で礼をわきまえ、自ら判断し身を引くこととされていた。
・年齢を基準にしない働き方とは、どのような働き方が良いのだろうか。「定年」の意味は、そもそも職を退くことである。その後の継続雇用とはどのような意味があるのだろうか。職を退いた後また職につく。なんだかおかしな具合だが、それが現実だ。
・日本の人事には、身分制度があり、その処遇や賃金が異なる。そこがあるからおかしな具合なのだ。それを解消することはできないものなのか。それを解消すれば、大きな働き方改革につながるように思える。
【コラム】働き方改革~労働生産性
・日本生産性本部は18日、労働生産性の国際比較を発表した。2018年のデータからはじいた日本の1時間あたりの労働生産性は46.8ドルと、前年を1.5%上回った。為替が円高に振れてドル換算の金額が膨らんだ。米国(74.7ドル)の6割強の水準で、先進7カ国(G7)のなかではデータが遡れる1970年以降、最下位が続いている。
・労働生産性とは、何か。労働生産性とは労働の成果を労働量で割ったもの、言い換えると「労働者が1時間で生み出す成果」の指標とのことらしい。ざっくりいうと売上から原価を引いた粗利益を労働時間で割ったものらしい。
・その労働生産性が先進7カ国中最下位で50年も続いているということだ。なぜなのか、合点がいかない。日本人は、こんなに勤勉に働いているのに最下位とはおかしいと思っているのは私だけだろうか。
・東京新聞によると、時間あたりでみた日本人の賃金が過去二十一年間で8%強減り、先進国中で唯一マイナスとなっていることが経済協力開発機構(OECD)の統計で明らかになった。企業が人件費を抑制しているのが主因だが、「働けど賃金低迷」の状況が消費をさらに冷え込ませる悪循環を招いている。
・労働生産性が低いから、賃金が下がっているのか、賃金が下がるから労働生産性がひくいのか。内閣府の報告では、国際的には、実質労働生産性が上昇すると、実質賃金が上昇する関係がみられるが、我が国では国内総生産の相対的低下が一貫して実質雇用者報酬の上昇を抑制しているとのことである。国内総生産とは、国内で一定期間の間に生産されたモノやサービスの付加価値の合計金額のことなので、付加価値が少なく、労働時間が多く生産性が低いため賃金が上がらないということらしい。
・働き方改革とは、やはり労働時間をいかにして少なくし、付加価値を多く勝ち取るかにかかっていると言うことなのだ。
【コラム】働き方改革 〜雇用関係によらない働き方
・働き方改革と言うけれど、どのような改革が世間で行なっているのかをみていきたい。先日の日経新聞では、ファミリーマートで「店長ヘルプ制度」なるものが開始されているとのことであった。
・「休みたいと言うオーナーはバックアップする」とのことで、年に1度1日本部から無償で店舗運営を代行するらしい。この年末年始も例外ではなく、多くの店舗が利用し、営業はするが、店舗側の人は休養する。
・経産省の調査では、コンビニオーナーは、85%ものオーナーが休日週1日以下で働いており、就労時間も56%が12時間以上となっている。「深夜勤務は当たり前で、休暇も27年間1度もない。」と答える人もおり、過酷な働き方を伺わせる悲痛な叫びも寄せられている。
・セブンイレブンのフランチャイズ店が短縮営業を行ったところ、本社から契約解除と1700万円の違約金の支払いを言い渡された件があった。これを受け「コンビニ加盟店ユニオン」が本社に団体交渉を申し入れた。セブンイレブン側は団体を労働者団体として認めていないため、回答しないとした。
・国の中労委は、団体交渉権を認めない決定を下した。これに対し、ユニオンは命令取り消しを求める行政訴訟を東京地裁に起こしている。中労委は、店長は会社の事業組織に組み入れられているとは言えず事業者間の問題と見るべきとし、その上で労組法上の労働者に当たらないとしていた。どのような結論になるのか。
・政府は、「働き方改革」の一つとして「雇用関係によらない働き方」の拡大を推進している。コンビニ店長の働き方の実態が、意外な方向に議論が広がっている。事業主か労働者か、そんな議論よりも「働き方」について、何年も何十年も変わっていかないで過労死を超えるような「働き方」が続いていくことの問題の根本原因に議論が集中していくことが重要ではないか。