【コラム】働き方改革〜150万円の壁

2020-01-08

総務省の労働力調査によると、夫の年収が300万円以上の場合、年収が高くなるほど妻の労働力率(労働力人口の比率)は低下するそうだ。日経新聞によると、共働き世帯の妻の過半数が、配偶者特別控除で減額の基準となる年収150万円未満のパートタイムの働き方を選んでいる。一方で、夫の年収が高いほど「150万円の壁」を超えて働く妻の年収も高くなっていることが、ニッセイ基礎研究所の調査でわかった。としている。

夫婦ともに少しでも収入があれば、政府統計では「共働き世帯」として集計される。共働き世帯の妻は35~54歳が約6割を占める。また、共働き世帯の約7割に子がいる。妻の労働時間はパートタイム(週当たり35時間未満)が54.5%を占め、パートタイムで働く妻は育児中の年代や高齢期、子のいる世帯で多いという。年収を見ると、「150万円の壁」を越えずに配偶者控除を意識して働く妻が51.5%であり、「壁」を越えて働く妻では、年収300万円未満と年収300~700万円未満がそれぞれ2割、年収700万円以上が3%弱である。年収700万円以上の妻は、約6割が夫も年収700万円以上である。

これは、夫の経済力が高いと、夫の扶養の範囲内で働く妻が増えるように思われているなか、高年収の妻も増えているということだ。1人目の子で出産後に退職せずに就業継続する妻が多いことや、出産後の妻の就業率は上昇傾向にある影響などが考えられる。あるいは、労働時間が短くとも、例えば短時間勤務の正規雇用者等の比較的年収の高い妻が増えているのかもしれない。

女性の働き方は、子の有無や同居の家族構成の違いなどを考えると、その実態はあまりにも多様であることがわかる。人手不足の中で政府は女性の労働力に期待を寄せている。配偶者特別控除が減額され始める上限額が引き上げられ、「壁」の範囲が広がっているものの、「壁」を遥かに越えて働きたい女性の意識があることも見逃すことはできない。そのためには、職場の制度環境の整備に加えて、家庭環境の整備、特に男性の意識の変革も必要ではないだろうか。

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